イタリア家庭料理では欠かせない食材に豆類があります。
豆は世界中で食べられています。
基本、乾燥したものを水で戻してから煮る『水煮』の工程を経て、甘くしたり塩で味を整えたりと、水煮後の味のつけ方は世界各国さまざまです。
日本ではあずきがあんこに、大豆が味噌に加工されるのが面白い食文化だなと思います。
イタリアでは、豆は水煮したものを塩味かトマトと一緒に煮込んで、スープやパスタソースにすることがほとんどです。
特に南イタリアは降雨量が少なく、飢饉に備え非常食として乾燥豆を栽培し常備してきた歴史があり、伝統料理にも数々の豆料理があります。
アサクラではパスタ用に、中部イタリアのマルケ州で自然栽培にて農家を営むクリスチャンに、ファッロという麦の一種を蒔いてもらっています。
マルケ州の山間部での農業は、麦か豆以外は作ることが難しく、しかも標高が700メートル以上あるので、さらに作ることができるものが限られた土地です。
収穫量も平地の2割前後少ないため農業をするには厳しいのですが、できる作物の味は良く、ファッロで作るパスタと豆のおいしさは、毎年食べるにしたがってわかってきました。
簡単に調理できるパスタと違って、豆料理は自分自身が苦手だったので、よくわからないなか輸入販売を始めたのが正直なところです(ファッロの裏作で作るため豆も買い取る必要があるのです)。
チェチとレンティッキエの魅力
チェチ(ひよこ豆)とレンティッキエ(レンズ豆)の2つをクリスチャンは作りますが、どちらも千年以上、品種改良などせず人が種を継いできた昔ながらのものです。
一般品よりも固く小さく、煮る時間も少し長くかかるのですが、食べてみるとその違いは歴然で、大地の環境と質が豆にダイレクトに反映していることに気づかされます。
深みのある味わいです。
豆はタンパク質含有量が多いので、やわらかく煮ると甘みと旨味がでて、煮汁はうま味・ブイヨンそのものになります。
また、どちらもイタリアでマクロビオティックをされている方用に味噌や醤油にも加工されています。
ファッロのパスタが大人気になり、その分、クリスチャンの作付け面積が広がりとてもありがたいのですが、それに伴い裏作の豆類もたくさんできます。
今年は特にチェチが豊作で、チェチ味噌づくりを広めるキャンペーンをおこないたいと思っています。
大豆で作る味噌とはまた違ったおいしさで、多くの方に知っていただきたいです。
そうはいっても、乾燥豆は煮るのが大変という方には、チェチの水煮のレトルトを昨年開発、販売しています。
ひよこ豆の水煮はよくありますが、イタリアの煮方によるもので、煮汁もたっぷり一緒にパックしました。
煮汁はブイヨン(出汁)として召し上がっていただけ、温めてそのまま食べるだけでもおいしく、工夫次第で豆料理の世界が広がります。
イタリアの豆で、ぜひいろいろな料理をお楽しみください!