牛乳のタンパク質は必要か
昨年、翻訳・共著させていただいた『低炭水化物ダイエットへの警鐘』にも記述があったT・コリン・キャンベル博士がおこなったネズミの実験について、2月号でお話ししました。
がんを形成しておいたネズミを高タンパク質食と低タンパク質食のグループに分け、がんの病巣の成長を観察した結果、高タンパク質食のグループのみ病巣が成長したという実験です。
実験に使われたタンパク質は牛乳の主要タンパク質であるカゼインであり、小麦の主要タンパク質グルテンや大豆タンパクではがんは成長しませんでした。
博士の見解は発がん性物質によってがんが発生する原因(芽)ができ、動物性タンパク質(特にカゼイン)ががんを進行させる、というものです。
つまり芽ができても動物性タンパク質を摂取しなければ、がんを成長(発病)させることなく一生を終えることができるということです。
酪農家の家に生まれながら、博士はこの研究結果を受け家族ぐるみで完全菜食者となり、あらゆる場面で乳製品など動物性食品の害について訴えておられます。
今、アメリカでは「Plantrician(プラントリシャン)」を名乗る医師が登場しています。
これは、Plant=植物、Nutrition=栄養、Physician=医師の3つの単語から作られた造語で、「PBWF(プラントベースドホールフーズ・植物由来の食材をなるべく精製しないで食べる)で健康を維持向上させ、さらに疾病を治療できることを熟知し、実践する医師」を意味します。
プラントリシャンの先生方は乳製品が喫煙以上に体へ悪影響を及ぼすと言及しています。
私自身もヴィーガンとなりPBWFを啓蒙するカフェ「CHOICE」を運営していますが、日々の診療で牛乳の害についてお話しすると「牛乳が完全栄養の健康食品」と信じて疑わない方が多くいらっしゃることに驚かされます。
「牛乳の害」については、それだけで本が一冊書けるほどなのです。
牛乳を飲むとカルシウムが減る?
牛乳の主要タンパク質カゼインが、がんを促進することは前述しました。
では、カルシウムはどうでしょうか。
多量のカルシウムが消化管から血液中に吸収されると、過剰なカルシウムは血管壁に沈着し、動脈硬化を引き起こす原因となります。
また余剰カルシウムは尿中に排泄されるため、尿路結石を作る原因となります。
さらに牛乳に豊富に含まれる動物性タンパク質はヒトの体液を酸性にし、それを中和する塩基性の炭酸カルシウムを作るために、骨や歯からカルシウムを導引します。
つまり、牛乳を飲むほど骨に貯蔵されているカルシウムが消費されるのです。
牛乳のカルシウムは、骨粗鬆症の予防にも子どもの丈夫な体を作るためにも役に立たないのです。
このことは牛乳を多く消費する国の人達がその消費量に比例して骨粗鬆症が多いことでも証明されています。
その他の問題
牛乳は、がんや骨粗鬆症以外にも虚血性心疾患、脳卒中、胃腸の出血、鉄欠乏性貧血、胃痙攣、腹痛・下痢、乳幼児の突然死、白内障、湿疹、多発性硬化症、Ⅰ型糖尿病、アテローム硬化症、ニキビ、滲出性中耳炎、気管支炎、白血病、リウマチ性関節炎、筋萎縮性側索硬化症、反社会的行動、虫歯、慢性疲労などを引き起こす原因に深くかかわることが指摘されています。
牛乳は栄養素が豊富に含まれる優れた飲み物ですが、あくまで牛の赤ちゃんにとってということ。
人間やペット以外に「他の種の乳」を「大人になっても」摂取し続ける生き物が他にあるでしょうか?
牛乳そのものの問題の他、牛乳の安定した流通のために起こる、抗生物質汚染や女性ホルモンに関わる問題も深刻です。
それらについても、いずれお話ししたいと思います。