2018年に改訂された『乳癌診療ガイドライン』において、「遺伝性の乳癌の予防切除を推奨する」との指針が示されました。
遺伝性異変をもつ乳癌未発病者における両側リスク低減乳癌切除術は、生存率の優位な改善が得られるわけではありません。
しかし、その傾向は示されており、発症のリスク低減は明らかで発症の不安軽減も見られることから「本人の意志に基づき実施する事を弱く推奨する」とされています。
女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが手術を受けたことを公表し話題となった「予防切除」ですが、決断する前に考えてみるべきことについてお話ししたいと思います。
癌を遠ざける努力をする
日本乳癌学会の「患者さんのための乳癌診療ガイドライン」では乳癌と遺伝の関係を次のように述べています。
遺伝性の乳癌は全体の5~10%であり、一般的に乳癌は食生活などの環境因子の影響が複雑に関与して発症すると考えられる。
また遺伝子は構造的にはそれほど安定しているものではなく、影響力を持つのは環境である。
つまり家系より生活(食)習慣のほうが影響があるのです。
家族に癌患者がいるから癌になるというよりも、環境と食生活が似ているという要因によって、家系的に癌を発病するように見える……と考えるべきです。
遺伝的にリスクがある人は、より慎重に、そうでない人も生活習慣を見直すことで、癌を遠ざけることができます。
有名なデータを示します。
乳癌発症率はヨーロッパとアメリカで非常に多く、東洋では少ないとされています。
ところが、欧米へ移住した東洋人の癌発症率は西洋人に近づきます。
このことからも癌は家系や人種ではなく生活習慣に影響を受けると考えられます。
そして、伝統的に西洋にあって東洋にない食材が牛乳なのです。
では、乳(前立腺)癌の発症の関係において、牛乳の何が問題なのでしょうか。
以前にもお話ししましたが、効率よく搾乳するために、牛は強制的に妊娠状態にされます。
妊娠中の哺乳類はエストロゲンなどの女性ホルモン値が高くなり、それらのホルモンが牛乳を通して私たちの体に入り、乳腺、子宮、前立腺などのエストロゲンレセプターをもつ臓器の癌を誘発すると考えられています。
さらに牛乳のエストロゲンはインスリン様成長因子(IGFー1)の増加をもたらすこともわかっています。
IGFー1はソマトメジンCともいいます。
成長ホルモンの代謝産物であり、通常、成長ホルモン分泌の過不足の指標としてソマトメジンCを測定します。
成長ホルモンは子どもでは成長を促し、成人では組織修復のため細胞分裂増殖に関わります。
思春期の女の子の乳房が膨らむのは成長ホルモンの細胞分裂の作用です。
乳癌では牛乳の成長ホルモンとエストロゲンの両方が癌細胞の分裂を促進し、乳癌の成長を促すと考えられています。
牛の赤ちゃんの飲み物
IGFー1(成長ホルモン)は元々、人の体内にあり、成人においては組織修復作用がありますので、それ自体が悪いものではありません。
しかし、牛乳は牛を牛のペースで(1日1㎏!)成長させるためのホルモンやホルモン様物質を高濃度に含んでいます。
牛乳は牛の赤ちゃんを育てるために、精密に設計されたものであり、種の違う私たちが飲むことは極めて不自然なのです。
多くの女性が乳癌と診断されているのに、私たちの耳に届くのは早期発見・早期治療の情報ばかり。
できてしまった癌をどのように治療するかより、いかに癌にならないよう「予防」するかのほうが有益ではないでしょうか。
予防するには食生活はもちろん、身の回りのさまざまな要因を慎重に見直すことが必要です。
自分自身のために正確な情報を集める努力をし、判断する能力を養うことが大切だと思うのです。