先月号で7月27日から8月2日におこなわれた第84回日本循環器学会で講演をさせていただいたお話をしました。食事で病気を予防し、治療もできる事実を医学会でお伝えできたことを誇りに思っています。学会の模様はオンラインで公開されていて、私が講演させていただいた一般公開セッションは学会員でなくても無料で視聴できますので、ぜひご覧いただければと思うのですが、今号では講演内容を抜粋して、お伝えしようと思います。
タンパク質は植物から摂る
セッションは「動物性タンパク質と植物性タンパク質どちらを選ぶべきか?」という議題でおこなわれました。テーマからもわかるように、プラントベースホールフードをお勧めするときに一番多い質問は「タンパク質はなにから摂るのですか?」です。一般常識とは異なるかもしれませんが、タンパク質摂取のために肉、魚、卵、乳製品どれも食べる必要はありません。タンパク質=動物性食品で、動物性タンパク質を多く食べることは健康によいという考え自体が間違っているのです。
必要量のタンパク質を摂取することは重要で1日あたり女性で約46g、男性で約56gが必要とされますが、多くの人が毎日90~135gのタンパク質を摂取しているといわれています。過剰に摂取したタンパク質は脂肪として蓄積される余分なカロリーとなるだけでなく、炎症の原因となったり、免疫系の機能を低下させたりします。具体的には腎臓損傷や痛風を起こしたり、骨からカルシウムを漏出させて、骨粗鬆症の原因を引き起したりします。
ヒトが作ることができない9つの必須アミノ酸すべてを含む完全なタンパク質の肉、卵、乳製品を食べることが健康によいという意見がありますが、毎日食べるさまざまな食品から必要な(必須)アミノ酸をすべて摂取するのは可能で、 バランスの取れたプラントベースホールフードの食事を摂る人は、必須アミノ酸を含むタンパク質の1日の推奨必要量を満たしているか、超えてさえいることがわかっています。
驚かれるかもしれませんが、すべてのタンパク質は植物に由来していて、藻、葉、穀物、そして果物などは成長する過程で、土壌、空気、太陽からアミノ酸を作り出しています。その植物を小魚から牛まであらゆる種類の動物が食べることにより、アミノ酸を吸収して成長します。ヒトが肉を食べて摂取するたんぱく質は動物を介して植物から来ているので、中間の動物を取り除けば、大元である植物から直接効率よくタンパク質を摂ることができるのです。さらに植物からタンパク質を摂取することにより、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質、ファイトケミカル、食物繊維などを一緒に摂取できるという大きな利点も付いてきます。逆にタンパク質を動物性食品から摂取すれば飽和脂肪酸や食餌性コレステロールを一緒に摂ってしまうことになります。
今回の講演は非営利団体「ザ・プラントリシャン・プロジェクト」 作成の動画をもとに許可を得て作成しました。ザ・プラントリシャンプロジェクトが毎年9月にアメリカで開催する「国際プラントベース栄養学ヘルスケア・カンファレンス」も今年はWEB開催になりましたが現地に行かなくても参加できるチャンスでもあります。参加されてみてはいかがでしょうか。