前号で「ミネラル」と「有害金属」について書かせていただきました。有害金属とは水銀・ヒ素・鉛・カドミウム・スズ等の総称で食品、大気、水道水、食品添加物、タバコ、ワクチン、調理器具、そして歯の詰め物など、あらゆる場面から体内に取り込まれます。
今回のテーマ「アマルガム」とは、銀・銅・スズ・亜鉛の混合物を水銀と混ぜて作る歯の詰め物の一般的な呼び方です。常温で液体である水銀を約50%混ぜることで金属がやわらかくなり、歯の穴に簡単に詰められるようになります。水俣病の原因で猛毒として知られる水銀ですが、微量でも身体に入れば、数え切れない不調の原因になります。水銀の中毒症状は多岐にわたるため、書ききれませんが、神経疾患、免疫疾患、心臓病、糖尿病、腎臓病、貧血、認知症、不妊、うつのほか、慢性疲労、不眠、便秘、すぐイライラするなど、通常では疾患として扱われない症状の原因になります。そんな猛毒が口の中にあるとしたら、ぞっとしないでしょうか。
5年前までは保険適応だった
日本では80年代をピークに虫歯治療はアマルガム充填法が主流でした。「私が歯の治療をしたのはそんなに昔ではないので大丈夫」と思われるかもしれませんが、クリニックの患者様で2010年以降に処置された歯の詰め物がアマルガムだった、という経験があります。2016年4月に保険適応から外れたため、現在はおこなわれていないと信じますが、銀色の歯でツルツルと光沢のあるパラジウム合金と違い、ザラザラと黒ずんで見える場合は、アマルガムの可能性が高く、歯の型を取って数日後に被せるプロセスではなく、虫歯を削って、当日に詰め物をして治療が終了したという方も、アマルガムを充填された可能性が高いです。また「口の中に銀色の詰め物がないので大丈夫」と思っても、銀色の詰め物の上に白い被せものをしている場合は、目視での確認が難しくなります。
アマルガムは非常に変質しやすい性質のため、口腔内で劣化して腐食していきます。食べ物を噛むときの摩擦や、食べ物や飲み物の熱で蒸気となって溶け出し、身体の中に取り込まれ続けます。
有害とされる水銀は有機水銀で、アマルガムは無機水銀だから無害である、との主張がありますが、無機水銀でも有害であることは科学的に立証されていますし、溶け出した水銀が腸に達すると、腸内細菌がその水銀を代謝して有機水銀に変化させます。
安易な除去がもっとも危険
猛毒の水銀が口の中にあると知ったらすぐ取り除きたいと思いますが、アマルガムは無造作に削り取ることがもっとも危険です。「処置の摩擦熱で発生する大量の水銀蒸気を吸い込まないようにする」「削りカスが口の中の粘膜に接触しないようにする」「削りカスを飲み込まないようにする」など危険を熟知し、正しい処置をしてくれる施設でおこなわないと、除去の際に大量の水銀に暴露することになり、放置より深刻な事態になりかねませんが、安全に除去できる施設はごく限られていて、安全に除去をおこなえたとしても、解決ではなく、次は体内に残る水銀の排出をおこなわなければいけません。
クリニックの栄養外来では、体内の水銀量と排出の状態を除去前と除去後に定期的に調べることをおすすめしています。ミネラルバランスは血液検査ではわかりませんので、前回ご紹介した「オリゴスキャン※」で調べ、排出がうまくいっていないようであれば、デトックスの指導をおこないます。
保険でおこなった歯科治療によって健康を害するなんて納得がいかないかもしれませんが、他の一般に多くおこなわれている事柄でも、同じようなことがあるかもしれません。正しい情報を収集し、よく考える習慣をつけることが自分を守る手段になると思います。