9月に入り、ようやく暑い盛りを乗り切ったと油断しがちですが、シミの予防とケアは季節を問いません。前回は当院のシミ治療の概要について書きました。今回からは主なシミの種類と治療法について書きます。医学的に「シミ」といえば「肝斑」を指すのですが肝斑ついてはお伝えする内容が多くなるので次回以降に譲ります。

先月号で書きましたが、私は30年ほど前に自身の治療経験からシミを「器質性」と「機能性」に分類しました。「器質性シミ」は、老人性のシミなど異常な細胞が存在するものや表皮基底層に存在するはずのメラニン色素産生細胞が真皮にあるなど構造の問題があるもの、「機能性シミ」は顕微鏡で組織を見ても形態や構造の異常がなく、メラニン産生細胞のメラニン産生機能が亢進しているだけのもので、肝斑や炎症後色素沈着などが挙げられます。

今号では「器質性シミ」を中心に外科的療法、主にレーザー治療で比較的短期間で良好な治療結果を得られる種類のシミについて説明します。

レーザーで治療可能なシミ

器質性シミの代表は、多くの人が「シミ」と連想する「老人性色素斑（日光黒子）」です。数㎜から数㎝までと大きさはさまざまで顔の他、首や腕など紫外線を受けやすい場所に見られ、比較的境目がはっきりしていることが特徴です。紫外線を受けることにより肌にメラニン色素が作られます。メラニン色素は紫外線から肌を守る働きがありますが、シミの原因にもなります。新陳代謝が正常におこなわれるとメラニン色素も体外に排出されますが加齢などにより新陳代謝機能が低下すると皮膚に残り、シミとなります。加齢によってシミができやすいのはそのためです。

顔、首、体、腕などに老人性シミの一部が盛り上がって表面がざらざらした状態の「脂漏性角化症」は「老人性疣贅」または「老人性イボ」などとも呼ばれます。「イボ」と呼ぶことがあるのですが通常のイボ（尋常性疣贅）と違いウイルスが原因で起こるのではないので人に伝染ることはありません。

大人になるころから両頬、額、目の下、小鼻などに現れる褐色から灰色のシミ様の色素を「遅発性両側性太田母斑様色素斑（A‌D‌M）」といいます。医学的にはシミではなくアザに分類しますが「シミ」と思って相談にいらっしゃることが多い症状です。

頬、鼻などに小さなシミが点在する「雀卵斑」いわゆる「そばかす」は顔にできることが大半ですが、肩や腕、背中や胸元、手などにも見られることがあります。幼少期に発現し思春期までに濃くなる場合が多く、遺伝的な要因で発生するといわれています。

肩、上腕から上背部にかけて多発性に分布する、数㎜から1㎝位までの境界鮮明な濃淡のある褐色色素斑を「光線性花弁状色素斑」と呼びます。海水浴などで水疱ができるほど強い日焼けをした後に出現することが多く紫外線に対する防除反応と考えられています。

これらのシミあるいはシミ様の色素斑は黒色に反応するレーザーやI‌P‌Lを使ったり、盛り上がった部分はレーザーで薄く削って治療をおこなうことによって比較的短期間で良好な治療結果を得ることができますが、最も重要なことは皮膚がんを識別して治療をおこなうことです。当院でも悪性が疑われる場合は病理検査をおこないます。また「雀卵斑（そばかす）」は遺伝的要因で発生するため、再発する性質があるので紫外線の防御や美白剤外用で再発を遅らせることが必須であるという説明は欠かせません。

再発する特徴がないシミであっても「作らない」「悪化させない」「再発させない」ためには紫外線防御に努め、摩擦を避け、新陳代謝が正常におこなわれるようにすることが大切です。医学的診断がおこなえ、適切な治療と指導を受けられる施設を受診することは確実かつ安全な方法です。