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自由教育ありのまま

「日本でいちばん楽しい学校」で新任教師がみた子どもたち

学校法人きのくに子どもの村学園かつやま子どもの村小中学校教員

中川 愛 (なかがわ あい)

かつやま子どもの村小中学校、きのくに国際高等専修学校を経て、立命館大学文学部卒業。高校生時代に東ティモールという国と出会い、残酷な歴史を背負いながらも、笑顔が絶えない東ティモールが大好きになる。「東ティモールのことを少しでも多くの人に伝える」ことを目標に、2019年度4月から、母校であるかつやま子どもの村で教員として働いている。父は、プレマ株式会社代表取締役の中川信男。

体験から学ぶ

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私は漢字を覚えるのが苦手だった。公立小学校に通っていたときには、小テストで0点をとったことも。テストで答えがわからないと、知っている字を適当に組み合わせて書いていたので、点数がもらえなくて当然だった。「ひらがなだけでも意味は通じるから、それでいいじゃん」と思っていた。

私が教師として働く「かつやま子どもの村」では、学年ごとに決められた漢字を全員で覚える授業はない。当然、ひたすら暗記するという時間もない。子どもたちは「ことば」の時間にプロジェクトの活動で経験、感じたことを原稿に書いたり、必要な情報を本で調べたりして、そのなかで自然と国語の能力を身につけていく。

私が担当しているパンづくりのクラスでは、毎週のようにプロジェクトの時間にパンを焼いている。焼くためにはレシピが必要になるため、子どもたちは、その都度、レシピを本で調べて書き出している。インターネットでも本でも、レシピは大人向けに書かれているものが多い。小学2年生の子で、よくレシピの調べものを担当している子は、大人や大きい子にとっても難しい漢字に、ひとつひとつまわりに聞きながら取り組んでいる。そして何度も調べている間に、「塩」や「砂糖」、「発酵」などのパンづくりによく出てくる文字を読めるようになった。

私自身も「子どもの村」の教育を受けてきたため、この学園の学習が体験から学ぶものであることを頭では理解していた。しかし、低学年の子が自然に難しい漢字を読んでいるのを目の当たりにしたときは驚いた。あらためて考えると、学年ごとに決められた文字を機械的に暗記するよりも、自分の生活に結び付いたものを覚えていく方が記憶に残りやすいだろう。本来、学びとはそういうかたちであるべきではないかと思えてくる。

5教科にとどまらない学び

ほかの教科についても同様である。子どもたちはプロジェクトや体育、美術に関する「自由選択」という授業を通して、本当にたくさんのことを学んでいる。たとえば、世間のパンづくりのレシピは、強力粉の量を200や300グラムで解説しているものが多い。しかし、私のクラスではそれを100グラムにしてつくることが多い。すると、分量を計算しなおす工程が必要で、それを低学年の子が担当することもある。割り算や分数を習っていなくても、手で数えたり、絵にかいて数えたりしながら考えている。高学年の子にしても、「かず」の時間に割り算や分数の学習を嫌がる子が、パンの分量の計算は楽しんで取り組んでいることも少なくない。自分が考えた分量でおいしいパンができあがるからだ。どのように役立つのかわからない計算方法をくりかえして覚えるよりも、はるかにやりがいがあるのだろう。

「どうしてパンはふくらむんだろう」、「パンケーキってパンなの? ケーキなの?」、「昔のパンってどんなもの?」。日々のプロジェクトから、さまざまな疑問が生まれ、答えを探求する。そうして子どもたちは、5教科の知識にとどまらず、さらに幅広い世界に目を向けて学びを広げていくのだ。

私は高校時代も子どもの村で送った。お世話になった恩師が言っていた言葉に印象的なものがある。「教育は〝する〟ものではなくて〝なる〟ものであるべきだ」。「教育する」という言葉が暗に意味するのは、「さまざまな知識をもった教師」が「未熟な生徒」を正しい方向に導く指導である。子どもの村の大人として子どもたちが日々の活動から学んでいく姿を見ていると、「〝なる〟教育」とは、子どもの村のような学び方なのではないかと感じるようになった。教育の中心は教師や保護者などの大人ではなく、学ぶ子ども自身なのだ。当然のようで、難しくて大切なこの視点を持ちながら、子どもたちと向き合い続けていきたい。

- 自由教育ありのまま - 2020年11月発刊 vol.158

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