母の機嫌と子の発育の関係
前回の「桂枝加竜骨牡蛎湯が合う人」のお話で「人の機嫌を気にしすぎる」という傾向があることをお伝えしました。このタイプの人が、他人の機嫌を気にするようになった原因として、子どものころに母親の機嫌が悪くなりやすかったという可能性があります。
まず本人が、人の機嫌をキャッチするセンサーが鋭かったという前提があります。そのうえで、母親の機嫌が悪くなることが多く、厳しくされたり、怒られたり、といった経験を繰り返した結果、母親の機嫌をうかがうようになっていったと想像できます。
子どもにとって、母親は命綱です。母親に見捨てられると命に関わります。がんばって母親の機嫌を察して、怒られないようにしたり、褒めてもらえるように先読みして、お利口に振る舞ったりします。思春期になり、反抗してこの関係性を壊すことができれば、自分らしく生きていく道を探すことができます。しかし、このタイプの母と子の場合、母は厳しすぎるし、子どもは遠慮してしまうので、しっかり反抗期を終えることができない場合が多いです。反抗期をしっかりできないと母親の価値観を持ったままになるため、自分らしさを発揮できなくなります。いい子でいることが当たり前になり、母親の機嫌を損ねないようにするため、自分のやりたいことを後回しにしたり、我慢したりします。「間違ったことをしていないのに、なんとなく満たされない」という思いを抱え続けます。
正誤に捕われる母親たち
正しいことをしているのに! 間違っていないのに! というところがポイントです。頭(マインド)には、過去の記憶から導いた法則が蓄積されています。ご飯をこぼしたら、母の機嫌が悪くなる。騒いだら怒られる。おとなしくしていたら褒められる。勉強していたら、文句を言われない、などです。この法則に照らし合わせて、できるだけ正しいことを選択しようとしてしまいます。ただ、この法則の多くは母親の価値観でできているので、母親の機嫌をとることはできますが、そのために自分の好きなことや、やりたいことを我慢しなくてはいけなくなります。正しいことのために、本音をないがしろにしなくてはいけなくなってしまうのです。
正しい、誤っているという判断は、母親の価値観です。母親にとって都合がよいことを「正しいこと」、都合が悪いことを「間違っていること」と誤って学習してしまったのです。
不機嫌をやり過ごす
また、このタイプの母親は多くの場合、いつも愚痴や文句を言っています(子どもだった私は、それが自分のせいであると思ってしまいました)。なんとかして母親の機嫌を良くしようと頑張りますが、この母親はもともと「いつも文句言う族」「愚痴を言いたい族」なので、子どもがどんなに頑張っても、愚痴や文句を言っては、不機嫌に振る舞います。「いつも不機嫌族」でもあります。この「いつも文句言う族」「愚痴を言いたい族」「いつも不機嫌族」は、犬がワンと吠える、キリンの首が長い、ということと同じで、生まれつきそういう生き物だったのです。子どもだった自分がどんなに頑張ろうが、「いつも不機嫌族」はいつも不機嫌です。そしてその不機嫌を使って子どもをコントロールしようとしてきました。そのおかげで子どもだった私は罪悪感を感じやすいし、自己肯定感が低くなっていました。
この「母の不機嫌」に左右されなくなるために、正しい方ではなく、好きな方、心地よい方、ワクワクする方、感動する方、ゆるむ方を選ぶという「チャレンジ」をしましょう。