日本のサトウキビの生産量は世界第1位のブラジルの600分の1程度で、製糖される粗糖には5倍程度の価格差があります。また、栽培面積や人件費の違いを考えれば、今後もこの価格差が縮まる要素は少ないです。「生産性向上・価格低減」を免罪符のように謳い、サトウキビ栽培技術の向上を図る、日本のこれまでの「右に倣え」の施策に違和を感じ、サトウキビ栽培・製糖業の進化・発展の方向性を見直す必要をかねてから感じています。
関連して、マレーシアの事例について知る機会があったのでご紹介いたします。同国は日本の0・87倍の国土を有して赤道に近く、熱帯雨林気候の農業に適した環境で、アブラヤシ・天然ゴム・ココナッツ・カカオ・サトウキビなどが栽培されています。しかしここ50年で、経済成長と連動する形で、農業離れが進みました。農業従事者は1960年の60%程度から、2018年には11・1%にまで減りました。この間、GDPは3倍以上に急成長しましたが 、GDPに占める農林水産業の比率は 46%から7・7%まで急激に落ち込みました。
また農業のなかでもパーム油の原料になるアブラヤシなど換金性の高い作物への移行が進み、サトウキビの生産は減少を続けています。いまでは国内生産を手放し、ブラジルなどから粗糖を輸入して、ココアなどの加工製品に作り変えて輸出しています。ちなみにココアの最大の輸出先が日本です。
粗糖の価格は、ブラジル・インド・タイなど主要生産国の状況などを鑑みながら、国際取引で毎時バランスされます。大きな世界経済の流れは変えられず、その他、食料自給率の確保や農業振興などの観点から、国内のサトウキビ栽培や製糖業の施策が検討されているようです。世界情勢を理解した上で、経済至上主義に絡め取られることなく、地域主導で独自の価値を創出したいと、あらためて思います。
参考資料:独立行政法人 農畜産業振興機構「マレーシアの砂糖産業の現状と加糖調製品の輸出動向について」
World Bank「Transforming the Agricultural Sector is Needed to Support Malaysia’s Transition to High-Income Nation Status」
東洋一美しいといわれる、前浜ビーチのサンセット。畑作業のあとや毎夕に、ビーチジョギングと汗流し遊泳を楽しんでいます