わかめやひじきなどの海藻が体にいいとは聞くのですが、ひとり暮らしだと外食が多く、つい食べるのを忘れてしまいます。どんな栄養素が含まれているのでしょうか?(那覇市・うみぶどうは酒の肴)
A.ビタミン・ミネラルなど、基本の栄養素を含みます
答える人 プレマ株式会社 お客様コンサルティングセクション 岸江 治次
新型コロナウイルスの影響で、自宅にこもる生活が当たり前になりました。感染収束が見えないために、先行きへの不安を感じる人もいるでしょう。慣れない生活の変化にストレスを感じる人も多く、食べることでごまかす人もいますが、せっかくの巣ごもり生活、免疫力を上げるチャンスでもあり、食生活を見直してみてはいかがでしょう。
昔から「食養生」といわれるように、なにをどのように食するかで、健康状態は決まります。また「身土不二」という言葉が表すように、人間の身体(生命)と暮らす土地は一体で、切っても切れない関係にあります。海に囲まれた日本で、我々の先祖は古来より、のり、わかめ、ひじき、もずくなどの海藻を摂取して、体の調子を整えてきました。和食に欠かせないだしは、海のもの(昆布)から旨みと栄養を取り出しています。
栄養学的に摂ったほうがよいといわれている、牛乳・卵・肉などの動物性食品ですが、たとえばカルシウムだけなら、海藻でもまかなえます。とりわけひじきには、牛乳の12倍のカルシウムが含まれています。苦手な人は、日常的にわかめ・ひじきなどを食べていれば、無理に牛乳を飲む必要はないともいえます。またそもそも牛乳は、畜産文化のヨーロッパ内陸部でさかんに生産される飲み物。日本人はもともと海藻からカルシウムを摂ってきたのです。
地球生命が誕生してしばらく経ったのちに生まれたのが、植物性でも動物性でもない藻類です。この原生生物である藻類には、海洋由来のタンパク質であるアミノ酸だけでなく、ビタミン、ミネラル、食物繊維も豊富です。基本的な栄養素は海藻に含まれているため、これと穀物を組み合わせれば、バランスのいい食生活を実践することができます。量は必要ないので、毎日少しずつ海藻を摂取すれば、自然と体の調子も整います。
通常は野菜から摂ることの多いビタミンやミネラルは、海藻からも補給できます。また食物繊維は腸内環境を整える役割を果たし、毒素を排出する「出す力」も育みます。くわえてアミノ酸はうま味成分であり、昆布やわかめなどを使った海藻の食事がおいしいのは、このうま味成分に由来するのです。
こうした海藻の食事は、昔の日本の食卓では当たり前でした。しかし今は食の選択肢が広がっているため、意識して献立に組み込むように努めないと、つい摂取することを忘れてしまう食材になってしまっています。
さらに海藻の長所を挙げるとしたら、豊富な鉄分です。とくにひじきに多く含まれています。貧血に悩む人は、積極的に摂るべき食材です。このひじきの鉄分量は、水揚げされたあと、鉄鍋で茹でることでさらに増幅します。しかし近年は、ステンレスの鍋でボイルすることも多いので、できれば鉄鍋で茹でたひじきを選んだほうが、鉄分の吸収は効率的といえるでしょう。
他にも血糖値の低下、血圧安定、消化吸収を高めるなど、いいこと尽くしの海藻ですが、昨今の海洋環境の激変で、収穫量が減少しています。海の恵みを受けてきた私たちは和食、伝統的な食文化を守るためにも、これらを意識して食べるとともに、自然環境の将来についても思いを馳せてみましょう。