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自由教育ありのまま

「日本でいちばん楽しい学校」で新任教師がみた子どもたち

学校法人きのくに子どもの村学園かつやま子どもの村小中学校教員

中川 愛 (なかがわ あい)

かつやま子どもの村小中学校、きのくに国際高等専修学校を経て、立命館大学文学部卒業。高校生時代に東ティモールという国と出会い、残酷な歴史を背負いながらも、笑顔が絶えない東ティモールが大好きになる。「東ティモールのことを少しでも多くの人に伝える」ことを目標に、2019年度4月から、母校であるかつやま子どもの村で教員として働いている。父は、プレマ株式会社代表取締役の中川信男。

休校が続くなかで

投稿日:

2020年3月20日、私が働いているかつやま子どもの村小中学校で「卒業を祝う会」がおこなわれた。小学生と中学生が同じ校舎で学校生活を送っているため、普段は小学校6年生と中学3年生を同時に祝う行事だが、今年は新型コロナウイルスの流行により、中学3年生とその家族と職員のみ参加することになった。
 
教員は簡単な仕事ではない。自分でこんなふうに言うのもどうかと思うが、しんどいことも嫌になるときもある。きっとそれは私だけではなく、すべての教員の方々が感じているはずだ。日々、こんなにも悩み、つまずいていると、心労でおかしくなってしまうのではないかと感じることさえある。
 
しかし私が働く母校、小中高一貫の学校の大人(教員)は、悩みなどないのかと思うほど元気で、気も若々しい。私が小学生のときに教員として働いていた大人たちも、当時と変わらない気概で働いているのだ。母校で働きはじめた頃にそのことについて尋ねたことがある。「かつやまで働いている大人は、なんでそんなに昔から変わらないの?」と。
 
「毎日子どもたちからエネルギーを吸われているけれど、それ以上に子どもたちからエネルギーをもらっているよ」。そんな答えが返ってきた。当時はあまり言葉の意味がわかっていなかったが、新型コロナウイルスの影響で休校が続き、子どもたちに毎日会えなくなった今は、その言葉の意味を強く実感している。
 
私は子どもたちとの関わりのなかで、たくさんのものをもらっていた。嫌なことがあっても「あいちゃーん」と笑顔で駆け寄ってくる子たちに癒され、大人の部屋(職員室)でおしゃべりをしながら思いきり笑う。そしてたくさん考えて、少しずついろんなことができるようになっていく子たちを見て励まされていた。
 
今までは仕事が大変だという感情に隠れてわからなくなっていたが、私は子どもたちとの生活のなかで元気をもらっていた。私以外の大人もそうだったのだと思う。だからこそ大人は、何年たっても変わらない姿で楽しそうに働いていられるのだろう。
 
もともと、私は子どもが大好きで母校で働きたいと思った。しかし、1年間働いていくなかで、そんな当たり前のことも見えなくなっていた。それに気づくことができただけでも、この休校期間は私にとって意味のあることだと思う。こんなふうに前向きに考えられるようになったのは先月号で書いた、できるだけ悲観せず、前向きにとらえながら進んでいく素敵な中学生に出会えたからだ。

つながりを感じる

休校中でも職員は働いている。自宅に長時間いる子どもたちへの「おたのしみ教材」の作成と発送がおもな仕事だ。
 
おたのしみ教材とは、手や身体を動かして楽しくすすめられる教材。おそらく他の学校と違うのは、全員がやらないといけない宿題ではないことだろう。自宅で時間を持て余している子、話し相手がいなくて困っている子、そんな子たちに向けたコミュニケーションツールでもあるからだ。これまでは授業が再開したらプロジェクトで育てる予定のお米、アズキ、コムギの種を送ったり、学校の様子や子どもたちから届いた手紙を紹介する新聞を渡してきた。
 
私が作成した教材には、はがきの書き方を簡単に説明したものがある。新型コロナウイルスが蔓延するなか、教育の現場でもZoomやSkypeを使ったオンライン授業が採用されている。休校中でも子どもたちの顔を見て授業ができる、すばらしいシステムだと思うが、私はこの機会にこそ、手紙のやりとりに慣れ親しんでほしいと思っている。
 
今の社会では手紙を送る機会がとても少ない。メールやテレビ電話と違って、手紙には書き手のぬくもりが宿る。また手紙は受け取るとすごく嬉しい。生まれた時からスマホがあって、LINEも当たり前の子どもたちにこそ、この休校期間を通して、手紙のやりとりを体験してみてほしい。「がっこうがまだはじまらなくて、しょんぼりしています」「がっこうはじまるかな?」「かつやま(子どもの村小中学校)に行けない。友だちとあそびたい」。早く学校に来たいと願う子どもたちから、手紙で素敵なメッセージが届く。元気な子とまた会える日を楽しみに待っている、今日この頃だ。

- 自由教育ありのまま - 2020年6月発刊 vol.153

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