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中川信男の多事争論

「多事争論」とは……福沢諭吉の言葉。 多数に飲み込まれない少数意見の存在が、 自由に生きるための唯一の道であることを示す

プレマ株式会社 代表取締役
ジェラティエーレ

中川信男 (なかがわ のぶお)

京都市生まれ。
文書で確認できる限り400年以上続く家系の長男。
20代は山や武道、インドや東南アジア諸国で修行。
3人の介護、5人の子育てを通じ東西の自然療法に親しむも、最新科学と医学の進化も否定せず、太古の叡智と近現代の知見、技術革新のバランスの取れた融合を目指す。1999年プレマ事務所設立、現プレマ株式会社代表取締役。保守的に見えて新しいもの好きな「ずぶずぶの京都人」。

商店街という空間

投稿日:

縁あってここ、京都でも最長のアーケード街、そして、最近とみに活気がでてきたと有名な三条会商店街に弊社が移転したのは、今年の夏になる少し前のことです。借りていたオフィスビルの新しいオーナーから「自分たちで使うので出て行ってください」と催告を受けたのが、昨年の冬になる前。追い出されるという事実を最高に解釈すると、「私たちにとって最善の新天地が見つかるかもしれない」という予感が全身に充満。その結果で見つけ出したのが、この場所でした。

私は京都市北区紫野という場所で生まれ育ちました。厳しい修行の臨済宗の寺として有名な大徳寺にほど近く、毎早朝、雲水さんが冬もわらじ一足で街を「ほうう」という声とともに托鉢にやってきます。昼下がりにはお豆腐やさんが「ぱーふー(とーふー)」というラッパの音も高らかに豆腐を売りに、ときにロバのパンやさんが子どもたちが思わず弾んでしまう音楽でパンを、賀茂の農家のおばあちゃんは野菜を重たいリヤカーにいっぱい載せて静かにやってきます。

そんな素敵な思い出が溢れた美しく情緒ある街でしたが、もう一つの自慢はやはり大徳寺近くの新大宮商店街でした。私が子どものときには京都で一番活気のある商店街と言われ、特に夏祭りは学区の子どもたちがほぼすべて集まるという、たいそうな賑わいでした。大きな氷の中心に入ったアイスクリームをなんとか手に入れようと、冷たくなった手を何度もズボンの下で温めながら、また溶かしだそうとした必死の攻防。やんちゃな子も、おとなしい子も、その祭を待ちに待ちました。少し南に下がると大宮商店街となり、そこにはまた、今宮神社の御旅所があって、春の連休の頃には賑やかな市が建ち、やはり、またどこの子どもたちも集まってきて目を輝かせます。

あの頃は、子どもたちがきらきらした素晴らしい時間が重なっていましたし、そこには必ず商店街がありました。そんな素敵な商店街も、京都における大規模小売店舗立地法の改正後はイオンやイズミヤが乱立、どの商店街もすっかり寂れてしまいました。今、京都にたくさんの人が押し寄せていますが、ほんとうに美しく町衆の生活感が味わえたのは、商店街が生きていた頃だったのです。

神社仏閣だけに京都はあらず。そこで人が地元を愛して暮らし、その地域の歴史が重なっていくという京都の原風景を知るのは、もう私の世代が最後に近いのかもしれません。やはり残念なことに、私の子どもたちは商店街とはシャッターの道で、決して楽しい場所ではないと思ってしまっていました。それは残念だなぁと時折思う一方で、やはり買い物もちょっと遊ぶのも近くのショッピングモールという、どこの街とも同じ有様になっていました。「だって、何でもあって便利やもん」という声が聞こえてきそうですが、「多様性を生かすことが、命の輝きをもまた生かすこと」「持続可能であるためには、多様性を守り育てることこそ唯一の解」という私たちの仕事の本質に立ち戻ったとき、一方で我が子が育つ環境は画一的でチェーン店が溢れるショッピングモールという、このねじれ感はずっと心の奥底で持ち続けていたのです。

新天地ここにあり

そんな、どうしようもない気持ちを抱えて子育てしていた私が、三条会商店街という街をあらためて知るきっかけになったのが、追い出しだったというのは皮肉な話ですが、私の直感は間違っていませんでした。ローカルな商店街にしてはあまりシャッターが閉まっておらず、そのうえ、結構な人通りです。聞けば、この10年ほどで一気に元気を取り戻している商店街だということで、移転してから何度かの祭のたびに、溢れんばかりの人がやってきているのを目の前にして、自社の売上がどうとかよりも、ここに活気があり続けて欲しいと願う気持ちのほうが大きくなっています。

確かにお客様がやってきてくれて、売上もちゃんと立って、そしてまた人がやってくるというのが理想的なサイクルですが、たとえ商売度外視でも、必死に祭の準備をする近隣商店の皆さんの努力をみると、真の京都人の誇りすら感じます。

京都は行政主導の祭ではなく、それらを町衆が支えるという伝統があります。
あの祇園祭ですらそうなのですから、末端のそれもまた推して知るべしといえるでしょう。もちろん、早速スタッフの子どもたちは嬉々として商店街の夜市を心底たのしみ、いつかまた、この賑わいをお客様にも味わって頂きたいと思っています。

少なくとも、私のレベルでは、この商店街に出会うまで、独立した個人がゆるやかな連帯のもとに、自発的に助け合って何か未来に繋がる何かを地域を越えて創り出すという共同体が、この京都の街の真ん中にあるとは思っていませんでした。京都で有名な地蔵盆には他のエリアの人は参加できませんが、商店街は違います。大企業もなく、有力なスポンサーが金銭的に支えている訳ではないこの場所に、子どもたちや大人たちの笑い声が集まってくることを、やはり京都でいう「よそ者」である私たちができることを探していきたいと願うのです。

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プレマ株式会社 代表取締役
中川信男(なかがわ のぶお)

京都市生まれ。
文書で確認できる限り400年以上続く家系の長男。
20代は山や武道、インドや東南アジア諸国で修行。
3人の介護、5人の子育てを通じ東西の自然療法に親しむも、最新科学と医学の進化も否定せず、太古の叡智と近現代の知見、技術革新のバランスの取れた融合を目指す。
1999年プレマ事務所設立、現プレマ株式会社代表取締役。
保守的に見えて新しいもの好きな「ずぶずぶの京都人」。

- 中川信男の多事争論 - 2016年10月発刊 Vol.109

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