私は動物性の食材を一切摂取しないヴィーガンという食事法を実践しています。その健康効果と食事法を患者様に指導し、また、クリニックに併設するカフェではお手本となる食事を提供しています。動物性食品を一切食べないヴィーガン、肉や魚は避けるけれども卵や牛乳は取るベジタリアンなど、その線引きや、実践する理由は多種多様だといえます。
ヴィーガンの食事では、さまざまな病気を予防するだけでなく、治すこともできると指導しています。それでは毎日の食事から動物性の食材を一切排除すれば健康になれるのでしょうか?
答えはイエスでもノーでもあります。
動物性の食材をたんぱく源としていた人がそれらの食材をカットすれば、それ以外の食材からたんぱく質を充足させる必要があります。
野菜にもたんぱく質が多く含まれますので、野菜をたっぷり食べるほか、豆類、キノコ、ナッツ、シーズ(種)、そして、全粒の穀物を取り入れることにより、必要な栄養素が充足されるだけでなくバラエティに富んだ食事を楽しむことができます。それこそ私がいつもお話するPBWF(植物由来の食材をなるべく精製しないで食べる)です。極端なお話をすればポテトチップスや菓子パンだけを食べるのもベジタリアンと言えるかもしれませんが、健康とはほど遠く、ジャンクフード・ベジタリアンとも呼ばれます。
2月に行われた平昌オリンピックでもヴィーガンのアスリートが活躍しました。しっかりと計画されたPBWFのヴィーガン食は、妊娠中、授乳中、乳幼児期、学童期、青年期、そしてアスリートにとっても適切な食事法であると考えられています。
ヴィーガンに不足しがちなビタミンB12を補うには
前出の書籍には、あるアスリートの論文も紹介しています。
小学生から陸上を始め、大学時代には箱根駅伝を走り、40歳ごろまではボディビルダーとして身体をつくってこられた、大阪市立大学元教授の羽間鋭雄先生です。
先生によると、糖質を制限し、動物性中心の食生活を実践していたボディビルダー時代、体はいつもだるく、眠く、排便の状態も悪かったといいます(糖質制限ダイエットを実践している人もこのような体の不調を感じておられるのではないでしょうか?)。
羽間先生は44歳のときに一年間PBWFを厳格におこない、ご自身の身体の変化について検証をおこなった結果を論文にまとめられ、その論文はPBWFが人体に与える影響を見る貴重な資料となりました。
67項目に及ぶ血液検査と健康調査の結果には特筆すべき問題は生じず、体力はあらゆる面で向上するばかりか期待をはるかに上回ったといいます。
結果と考察について評言社のウェブサイト同著紹介ページよりダウンロードできます。
私は動物性食品を一切食べないヴィーガンという食事法を実践しています。
主な理由は「健康な体を手に入れるため」。
周りには子どものころからヴィーガンで育ち、健やかに成長した大人やパフォーマンスを上げているアスリートが当たり前に存在します。
大人も子どももアスリートも、例外なくPBWFで健康な体を手に入れられるのに、わざわざ病気のリスクが上がる食品を摂る必要はないと思うのです。
「肉が好き」「チーズが止められない」というなら、タバコやお酒のように嗜好品として捉え、摂り過ぎると体に害を及ぼすと理解して食べるのはよいと思います。
「子どもの成長のために」「丈夫な骨を作るために」という理由で肉や魚を食べる、牛乳を飲むというのなら、それは間違いです。
まして消化管が未熟な小児に「発育のために必要な食品」として与えるのは、かえって悪影響を及ぼすリスクが高くなります。
それらを摂取しなくても、人間の身体は十分に作られ機能するということを、ぜひ知ってほしいものです。